マネーフォワードクラウド給与とfreee人事労務の違いを比較
2021年8月1日更新
クラウド給与ソフトはたくさんありますが、その中でも特に有名なものが「マネーフォワードクラウド給与」と「freee人事労務」です。
特に会計ソフトをクラウド化している場合、ほとんどが「マネーフォワードクラウド会計」か「freee会計」でしょうから、給与ソフトも自然とこの二つのどちらかになるでしょう。
今回はこの2大クラウド給与ソフトについて、次の比較表をもとに一つずつ詳細を解説していきます。
また、労務全体のDXについても動画や記事で紹介していますので、一緒にご覧ください。
https://www.sankokai-sr.jp/manage/contents/roumu-dx/
目次
会計ソフトとの連携
どちらも同じシリーズの会計ソフトとの連携が可能です。
すでにクラウド会計ソフトを導入している場合はあまり迷うことはありません。
どうしても自社の制度に合わない場合を除き、同じシリーズの給与ソフトを導入しましょう。
計算結果の会計ソフトへの取り込みや、給与での経費精算などで連携できる点がメリットです。
勤怠・労務管理・電子申請ソフトとの連携
連携したいソフトが決まっている場合は、そのソフトとAPI連携可能なソフトを選びましょう。
ほとんどの会社では勤怠ソフトと連携することになると思いますので、以下の記事も一緒にご覧ください。
https://www.sankokai-sr.jp/manage/contents/kintai-comparison/
また、どちらもSmartHRとの連携でさらに便利になるので、SmartHRに関する記事も一緒にご覧ください。
https://www.sankokai-sr.jp/manage/contents/smarthr-merit-demerit/
マネーフォワードクラウド給与
数多くのソフトとのAPI連携が可能です。
(KING OF TIME、Touch On Time、ジョブカン勤怠管理、AKASHI、IEYASU、レコル、勤革時、セコムあんしん勤怠管理サービス、オフィスステーション、SmartHRなど)
もちろんマネーフォワードクラウド勤怠とのAPI連携も可能です。
freee人事労務
マネーフォワードクラウド給与と比べると少なめですが、基本的なソフトとはAPI連携可能です。
(KING OF TIME、Touch On Time、勤革時、IEYASU、オフィスステーション、SmartHRなど)
オフィスステーションと連携できないので電子申請に弱いですが、DirectHRとの連携が控えているので期待したいです。
オフィスステーションとのAPI連携も開始しました!
CSV連携であればジョブカン勤怠管理、AKASHIなどとも連携可能です。
コンセプト
どちらもメイン機能は給与計算なのですが、コンセプトに若干の違いがあります。
このコンセプトの違いが各機能の違いに結びついてきますので、最初に解説します。
マネーフォワードクラウド給与
マネーフォワードクラウド給与は、人事労務freeeと比べると給与計算に特化したソフトです。
給与計算に特化している分、給与計算機能が豊富でできることは多く、非常に使いやすくなっています。
ただし給与計算業務に重要な勤怠管理や入社管理、社会保険手続き、年末調整などについては、マネーフォワードクラウド勤怠やマネーフォワードクラウド社会保険、マネーフォワードクラウド人事管理、マネーフォワードクラウド年末調整、またはSmartHRなどの外部ソフトとの連携を前提に作られています。
freee人事労務
freee人事労務は既存のソフトとは異なり、統合型ソフトを目指しています。
給与計算だけでなく、入社管理、勤怠管理、休暇管理、Web明細、マイナンバー管理、年末調整、社会保険手続を全て一つのソフトで完結しようというものです。
統合型のメリットは従業員マスタの登録が1箇所で済むことや、担当者や従業員にとってわかりやすいことなどです。
こう書くとものすごく高機能に見えますが、実は現状では広く浅くといった感じで、まだまだ機能的に物足りない部分もあります。
そのため労務全てをIT化しようとすると結局は外部サービスとの連携を余儀なくされることが多いです。
ただ、会社の制度によっては外部サービスとの連携数を減らすことはできるでしょう。
料金
それぞれ料金体系が結構違うので、一概に比較することは難しいです。
よって本記事では、料金よりも「自社にとって本当に合っているのはどちらか」という観点を重視して比較していきます。
機能
設定できること、できないこと
給与計算は実は非常に複雑で、会社の制度によってたくさんの設定をしなければなりません。
そこで両ソフトで設定できること、できないことについて解説します。
マネーフォワードクラウド給与
給与計算に特化しているだけあって、設定できる項目が豊富です。
計算式を細かくカスタムすることも可能です。
物足りないのが固定残業代の設定ができない点です。
※固定残業代の設定ができるようになりました!
また、マネーフォワードクラウド給与では法令に則った正しい固定残業代の計算がしやすいです。固定残業代を導入している場合はマネーフォワードクラウド給与をおすすめします。
回数入力による自動計算は、支給項目、控除項目、共に自由度の高い設定が可能です。
ただし、時給者や日給者に月額の手当が出ている場合、その手当を自動で割増賃金の単価に含めることができません。時給者や日給者が多い場合は注意が必要です。
前月比機能は既存ソフトにはない機能で非常に便利です。
前月と変更があった項目を表示してくれます。
freee人事労務
マネーフォワードクラウド給与と比べると設定できない項目が多いです。
代表的なものが複数時給です。1人に設定できる時給が1種類だけなので、飲食店などで時間帯や曜日によって異なる時給を設定している会社には対応できません。
時間帯別の時給設定に対応しました。
しかし所定労働時間だけなので、残業にも複数パターンを設定することはできません。
また、残業代などの項目が基本的なものしか設定できず名称も変更できないため、任意の項目名で任意の計算式を設定することが難しいです。
さらに残念なのが住民税の控除月を選べないことです。必ず給与支給月と連動するので、支給月と一致しない方法で控除している会社は工夫しなければならず、工数が増えてしまいます。
住民税の控除月を選べるようになりました!
回数入力による自動計算は一部可能です。支給項目では一応設定できるのですが、紐付けられる勤怠項目は予め用意された項目しか利用できず、任意の勤怠項目を追加することはできません。
勤怠項目もカスタムすることができるようになりました。
エンタープライズプランであれば利用できます。
控除項目については設定することはできません。
固定残業代は、マネーフォワードクラウド給与とは違い計算がしづらいです。計算できなくはないのですが、対応できるパターンが限られています。固定残業代を導入している場合にはあまりお勧めできません。
前月比更新レポートは既存ソフトには無い機能で非常に便利です。
利用できるのはエンタープライズプランなので費用はかさみますが、各項目ごとに前月から変更があった部分だけを確認することができ、変更により影響する項目まで確認できます。さらに項目ごとにフィルターで絞り込んで表示までできる非常に便利な機能です。
どちらにも共通すること
社会保険料の当月徴収にはどちらのソフトも対応していません。現在当月徴収で運用している会社は、できればこれを機に翌月徴収に変更することをオススメします。
マネーフォワードクラウド給与では当月徴収に対応しました!
クラウド給与ソフトを導入するならば、法律から外れた方法や、毎月手当が変動する制度などは見直すことをオススメします。
また、産休・育休による社会保険料免除にも対応していないため、一旦保険から喪失したように設定するなど工夫して対応する必要があります。
操作性・UI
マネーフォワードクラウド給与
比較的既存の給与ソフトに近いので、これまでに給与ソフトを使ったことがある方にとっては扱いやすいと思います。
ベーシックなのでわかりやすいです。
また、確認が終わった人の画面で「確認済み」のチェックを付けられるのも非常に便利です。給与計算業務がどこまで進んでいるか一目瞭然です。
freee人事労務
既存ソフトと比べると特殊なソフトです。
まず、一般的なソフトでは給与計算の画面で出勤日数などの勤怠項目を入力するものが多いのですが、freee人事労務では勤怠画面が別にあります。勤怠を入力しながら計算結果を同じページで確認することができません。
ただ、これについては勤怠をソフトで管理することを前提にしているからだと思います。freee人事労務で勤怠を管理していたり、外部ソフトで管理して連携させれば勤怠を入力するという作業はなくなるので、勤怠を手入力することは想定しない構成にしているのでしょう。確かに勤怠情報だけを確認するのなら別に独立したページがあった方がわかりやすいです。
また、給与計算画面で手当などを修正しても社会保険料や所得税が自動で更新されないため、手動で更新ボタンをクリックしなければなりません。手当などの固定的給与が変わるのは定期昇給などだけで、基本的には毎月変わるものではないという前提なのでしょうが、これは非常に使いずらいです。
CSVで手当データなどを作成し取り込めば自動計算されるのですが、ITに疎い方にはややハードルが高いように感じます。一度覚えてしまえばそんなに難しくはありませんが、Officeやwindowsが最新のバージョンではないとCSVの作成がうまくできない場合もあります。
給与計算確定後の動線はわかりやすいです。次はいつまでに何をすべきか表示されます。
また、固定的賃金の変動・直近3ヶ月平均により月額変更届の提出が必要かどうかを自動で判断して教えてくれます。
Web明細
どちらのソフトも給与明細をWebで確認できる機能がありますが、少し違いがあります。
マネーフォワードクラウド給与
明細の公開予約ができますので、指定した公開日に公開することができます。
公開日以降に個人の明細確認ページにアクセスしてログインすることで確認できます。
レスポンシブデザインに対応しているので、スマホ画面に最適化されたページで確認できます。
通知と公開を予約することもできます。
freee人事労務
ワンクリックで全員に一斉にメールを送信することができます。メールの本文にURLがあり、アクセスしてログインすると確認できます。
ただし送信・公開予約はできないため、給与を確定したと同時に通知するか、支給日に手動で通知しなければなりません。(SmartHRと連携すると解決することができます。)
公開・送信予約ができるようになりました!
また、スマホアプリがあるのでアプリで確認することも可能です。
アプリにはパスコードロック機能もあり、Touch ID (指紋認証)や Face ID(顔認証)にも対応しています。
しかしアプリではなくブラウザで見るマイページはレスポンシブデザインに対応していません。
出力できる帳票
どちらも各種帳票を出力できるので、その種類について比較します。違いはあまり大きくないです。
マネーフォワードクラウド給与
freee人事労務と比べると、出力できる帳票は豊富にあります。
freee人事労務
マネーフォワードクラウド給与と比べると少ないですが、必要なものは用意されています。
法定3帳簿(労働者名簿・出勤簿・賃金台帳)や支給控除一覧表、源泉徴収票などの基本的な帳票は出力できるのですが、給与振込一覧表などは出力できません。全銀フォーマットを出力し、オンラインバンキングで振り込むことを前提にしているのでしょう。
できるだけペーパーレスでというコンセプトを感じます。
年末調整
マネーフォワードクラウド給与
マネーフォワードクラウド給与の年末調整機能は、マネーフォワードクラウド年末調整に移行しました。
双方を併用すれば、従業員からの情報回収から、年末調整の計算、電子申告まで可能です。
freee人事労務
ベーシックプランであれば、従業員からの情報回収から、年末調整の計算、電子申告まで可能です。
入社時の情報回収
マネーフォワードクラウド給与
マネーフォワードクラウド給与ではできませんが、マネーフォワードクラウド人事管理で対応できます。
SmartHRで情報回収し、マネーフォワードクラウド給与を連携することも可能です。
freee人事労務
可能ですが、SmartHRと比べると使いにくいです。
もちろん、SmartHRで情報回収し、マネーフォワードクラウド給与を連携することも可能です。
社会保険手続き
マネーフォワードクラウド給与
マネーフォワードクラウド給与では対応できず、マネーフォワードクラウド社会保険での対応となります。
マネーフォワードクラウド給与から、マネーフォワードクラウド社会保険へのデータ連携はスムーズに行うことができます。
また、オフィスステーションやSmartHRと連携すれば現時点でも電子申請は可能です。
freee人事労務
算定基礎届(定時決定)、月額変更届(随時改定)、年度更新、賞与支払届には対応しており、その中で労働保険料の年度更新については電子申請にも対応しています。
また、従業員の入退社に関する届出書の作成にも対応しているので、社会保険や雇用保険の資格取得届、資格喪失届なども出力できます。
オフィスステーションやSmartHRと連携すれば年度更新以外も電子申請が可能です。
マイナンバー機能
マネーフォワードクラウド給与
従業員や扶養家族のマイナンバーを入力することはできますが、従業員を招待して従業員に直接入力してもらう収集機能は、別途マネーフォワードクラウドマイナンバーを契約しなければ利用できません。
freee人事労務
従業員を招待して収集する機能を利用できます。本人確認書類はスマホで撮影してアップしてもらえばOKです。
まとめ
最後にこれまでに比較したものをまとめ、それぞれどういった会社が合っているかをお伝えして終わります。
選び方のコツとしては、給与制度を確認して正しく効率的な給与計算ができるかという観点で選ぶことです。
双方とも他ソフトとのAPI連携が進んだことで、入社時の情報収集、保険手続き、Web明細、マイナンバーなどは他ソフトと連携することで課題解決可能です。
特にマネーフォワードはそれぞれの領域の専門ソフトがありますので、組み合わせて利用すれば解決できます。
双方ともメイン機能は給与計算なので、計算時に手修正せずに自動化できるよう、給与計算機能について重点的に比較・確認しましょう。
また、ここまで長々と解説してきましたが、よくわからず決めきれない場合は導入支援を専門家に依頼することをお勧めします。
一度導入してしまうと変更するのはハードルが高いです。
自社にあったソフト選びから適切に運用できるような初期設定など、HRテック導入では最初が肝心です。
当事務所は初期設定から運用支援までをパッケージにして提供しております。全国対応可能ですので、興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
https://www.sankokai-sr.jp/manage/service/system.html
マネーフォワードクラウド給与がオススメの会社
・マネーフォワードクラウド会計を利用している
・複雑な計算式を設定したい
・固定残業代を導入している
・社会保険料を当月徴収にしたい
・様々な種類の帳票を出力したい
・毎月変動する手当がある
人事労務freeeがオススメの会社
・会計freeeを利用している
・給与明細をスマホアプリで確認したい
・出来るだけ扱うソフト数を減らしたい
・勤務制度がシンプル(土日祝日休みなど)
・時給者や日給者に月額の手当を支給している